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「パレードへようこそ」(原題「PRIDE」) ビル・ナイ様の不器用さにやられる♪

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パレードへようこそ」は、昨年の「TOKYO RAINBOW PRIDE」の頃に知り、興味を持っていた映画でした。
その頃は、まだ、アンドリュー・スコットのことは知らなかったのだけど、この映画に出ていると知り、ちゃんと観ようと思ったのです。

そして、思いがけなく、ビル・ナイ様も出ていることもわかり、ちょっとワクワクで観ました。

ふたりとも、もっと出番が少ないのかと思っていたのですが、アンドリューはロンドンのLGSM(Lesbian&Gay support Miners)側で、ビル・ナイは炭鉱町の労働組合の書記係として、割とキーとなる役でしたよね。
アンドリューの役ゲシンは、北ウェールズ出身で、LGSMが支援に行く南ウェールズの炭坑の町ディライスを地図で見つけるきっかけを作りました。また、LGSMに活動拠点となる部屋を、貸していました。
なので、「たぶん、ウェールズ語でしゃべっているんだろうな?」というシーンもいくつか登場しましたね。全く英語と違うようにしか聞こえませんでしたが。
そして、南ウェールズの炭坑町に来て、自己紹介をすると、「ここでは同性愛者はいいけど、北ウェールズの人間だけはダメ」というきっつーいジョークの餌食に。。。笑。
この辺りから、ビル・ナイの役クリフが、初対面でジョークにどっきりしているゲシンの肩をトントンってしたり、ゲシンを「息子」(Welcome home,son.)と呼んだり、「ん?」というシーンがあったんですが。その勘は、当たっていたみたいで。勘と言っても、本当に「ん?」と気になっただけだったんですが。

クリフは、途中で、「自分はゲイだ」と、同じく労働組合の委員長であるヘフィーナに告白しますが、ヘフィーナは「私も、ちょっと前から、そうなんじゃないかと気付いていた」と言い、クリフがびっくりしている、その反応がおもしろい。しかもヘフィーナさん、「ちょっと前」と言いつつ、「1968年から」って、この映画で描かれているのが1984年のことなので、それでもだいぶん前なんですけど。このふたり、おそらく幼馴染なんでしょうね。「ちょっと前」と言いつつ、「だいぶん前」っていうのに、ふたりの関係がわかったし、だからこそ、ヘフィーナさんはゲイに偏見もなかったんだとも思います。
※もしかしたら、ヘフィーナさんは、若い頃(1968年)クリフにアプローチしたんだけど、まったく気付いてる素振りもなくて、それで気付いたとか?!もあるよね。
このシーンは、すごく好き♪ヘフィーナが食パンにバター(?)を塗り、クリフが切るという作業をしているのだけど、それまで対角線で三角に切られているのに、クリフは四角く切っちゃうわ、不器用さが可愛すぎる
アンドリュー目当てで見始めたはずが、思いがけなく出ていたビル・ナイ様にやられてます。
※少し前に「マリーゴールドホテル 幸せへの第二章」を観たんですが、これでもビル・ナイ様の不器用さにやられていました。

あと、ゲシンは、仕事がなくてふらふらしている恋人(俳優)のジョナサンが心配で、何かに関われるようにとLGSMに参加したのだけれど、はじめは乗り気じゃなかったジョナサンが、炭坑町のパーティーで、町の女性が「この町の男は、ダンスが踊れない」と言うのを聞き、ダンスを踊りだしたのが、町の人たちと打ち解けるきっかけにもなっているんですよね。
※そのダンスを踊りだす前にかかっていた曲が、カルチャークラブの「カーマは気まぐれ(Karma Chameleon)」だったり。(他の曲も気になる)
また、ゲシンは、最初の訪問には行かなかったのだけれど、それは故郷の母親との確執があったからで、二回目の訪問についてきたときも、バンを降りた途端「やっぱり来なければよかった」と言い出すくらい。。。(あんまりいい思い出がないんだろうなぁ。)
そして、その後、ヘフィーナクリフに挨拶に行くと、「北ウェールズの人間はダメ」という例のシーンで。笑。
アンドリューと、ビル・ナイ様のツーショット!わお♪
クリフは、ゲシン同郷っていうだけじゃない、親しみを感じているように思ったんですね。
クリフもシャイだけど、ゲシンはもっとシャイな感じだしね。
そう言えば、クリフって独身なのかしら?それで息子みたいに思ったのかな?
そのためか、ゲシンも「ウェールズにいて、素のままの自分でいられる」と、疎遠になっている母親に会いに行くことを決めます。結果は、後ほど、ゲシンが入院したときに、母親が会いに来てくれることで判明。良かった。。。

この話も実話を基にしていて、翌年1985年のゲイ・プライドに、炭坑夫たちがバス何台もで乗り付け、(元は、LをLONDONと思ったダイが、スピーチでした約束)先頭をパレード。
映画の中で、何度も出てくる「手を繋ぐ」イメージは、炭鉱町ディライスの組合の旗にあり、ダイが、マークに「いつか見せる」と言った「友情」の証ですね。
その後も、労働党大会で、党の規約に同性愛者の権利を盛り込むことが可決され、それには、全国炭鉱労働組合の全会一致の支持があったからだそう。
全会一致というのは、、、あの人もでしょうか?
偏見のある人が「わたしは、偏見は持っていないんだけどね」と前置きして、語り出すのが、「それを偏見っていうんだよね」っていう内容なのは、どこでも一緒なんですね。
あの人を変えたのなら、本当に凄い。。。

LGSMを支援者として呼ぶかどうかを話し合っているところに偶然居合わせて、組合の委員になったシャンは、ジョナサンのアドバイスの後、大学へ行き、地方初の女性議員となったそうで、「LGBTの問題は、すべての人の問題につながっているんだなぁ」と思いました。

あと、、、LGSMの主要メンバーが、全員、いわゆる「おネエ系」ではなかったのも良かったです。
日本では、ゲイに対するイメージが「オネエ」だったりするんだけれど、これもいわゆる偏見だと思うよね。
彼らも「素のままでいられる」ように。。。


映画「パレードへようこそ」予告編

by カエレバ

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93歳の「Mr.ホームズ」イアン・マッケランと真田広之の演技がとても美しい映画でした。

イアン・マッケラン主演の「Mr.ホームズ」を観てきました。
93歳のシャーロック・ホームズを、イアン・マッケランが演じるなんて、観ないわけにはいきません。英国俳優好きの心を掴む人選!

そして、予告編を見て、はじめて気づいたのですが、真田広之さんが出演されていました。
「どんな役なんだろうか?」と思っていましたが、とても良かったです。
事前に読んだ(読んでしまった!)イアン・マッケランのインタビューでも、真田さんを「日本人にしかできない演技」と褒められていました。
そのシーンは、すぐにわかりました。

そうなんです。ホームズが、第二次世界大戦直後の日本を訪れていた、という設定で、ホームズを日本に呼んだのが、「梅崎」という真田広之さんの役でした。
ホームズは、「ヒレサンショウ」という山椒を探しに日本に来たようなのですが、そのために、広島に案内するのが梅崎です。
何故、広島なのか?
しかも、原爆の被害で焼け野原の広島。。。
どうやら「ヒレサンショウ」は生命力が強いということを言いたかったようなのですが。
その「ヒレサンショウ」を焼け野原の中で見つけた梅崎は、跪いて座り、両手を合わせ(合掌し)てから、「ヒレサンショウ」を掘り起こします。
その合掌する姿を、イアン・マッケランは、「日本人にしかできない」と褒められていたのですが、真田さんは、とても自然に手を合わせられているように見えました。
とても美しい所作だったと思います。
たったそれだけの仕草で、道端の小さな植物であっても「生命」として敬意を払う日本人の美徳を現していて、そして英国人から、日本人はそういう美徳を持っていると思われていることを感じました。
そのシーンの前後に、広島の焼け野原で、石を円形に並べている人がいました。
梅崎が、「亡くなった人(家族)を弔うために、石を墓標がわりに並べて祈っている」ことを説明していたのですが、最後にホームズが、自分の家で、石を並べて亡くなった人(マイクロフト、ワトソンなど)を弔っていて、そのシーンにとても心を打たれました。
日本人への敬意のようなものさえ感じさせる、イアン・マッケランも、とても美しく見えました。

ところで「ヒレサンショウ」を日本に探しに行ったのには、訳がありました。
この映画の重要なポイントでもあるのですが、93歳のホームズは、自分の記憶力に限界を感じていて、痴呆の症状に悩んでいたのです。
「ヒレサンショウ」には、痴呆を緩和する効能があったのでしょう。
だからと言って、それを、あの原爆の焼け野原の広島にまで探しに行くとは。。。
少し謎なのは、このホームズの来日の話は、梅崎が持ちかけたのか、ホームズが希望していたところに、たまたま梅崎が案内役として現れたのか?そのあたりがよくわかりませんでした。
ただ、真田さんの役の梅崎には、ホームズに会いたい目的がありました。
実は、梅崎の父親は、ホームズを慕って(?)マイクロフトの元で、つまり英国の諜報機関で働いていました。ホームズとも会っていて、そのことを手紙に書き、日本にいる家族へ送り、それを最後に音信不通になったようです。
「UMAZAKI」という日本人の名前だけでも、本来のホームズなら覚えていて当然だと思うのですが、93歳のホームズは、まったく覚えていませんでした。それどころか、今、会っている日本人の名前を忘れないように、白いシャツの袖口に「UMEZAKI」と書き込んでいるくらい、自分の記憶に自信がない状態でした。
真田さんの役の梅崎は、最後の手紙に書かれていたホームズに会い、父親のことを聞き出したかったのだと思いますが、曲解すれば、「父を奪った憎いホームズ」でもあり、そのあたりの微妙な心理の演技も、とてもおもしろかったです。

そうそう。梅崎は、ホームズの活躍を書いた本(ワトソンが書いた小説)に、「サインが欲しい」と言うのですが、その辺りで、「父が本を買ってくれて、子供の頃からファンだった」みたいなことを言ったのかな?
でも、ホームズは、その話は嘘だと見破ります。その本には、図書館の装備(貸出カードを入れる袋かな?)を剥がした跡があったのです。そして、もちろん、目の前にいる梅崎の目的も疑いますが、ホームズは、その推理が出来ても、まだ梅崎の父親のことは思い出してもいないかったのです。
結局、梅崎とは、けんか別れのような状態になってしまい、日本から帰ってきたホームズでした。
「もう連絡しない」と言っていた梅崎から、手紙が来て、梅崎の母親が亡くなったことを告げる手紙だと当てたり、、、「ヒレサンショウ」の効果はあったのでしょうか?
梅崎は、父親を知る唯一の手掛かりでもあったホームズに、自分の父親のイメージを重ねていたんじゃないかとも思いました。だからこそ、余計に、憎さと、「会いたい」という気持ちがあったのかな?
真田広之さんの梅崎とのシーンは、本筋とは直接関係ないけれど、とても重要で、印象深く残りました。
この映画自体も、すごく派手ではないけれど、思い出に残るいい映画です。

あと、この映画では、ホームズの新しい(?)相棒が10歳の少年で、とても利発そうで可愛かったです。
田舎に住んでいるホームズは、養蜂をやっている設定でした。
ホームズの蜂蜜、欲しい♪

さて本筋は、これも意外で、実は「ホームズの恋愛?!」という驚きのホームズ最後の事件。。。
その事件のことを小説に書いたのはワトソンで、ホームズのことを思って、活躍する話になっていたのだけれど、ホームズは、93歳になり記憶もおぼろげになっても、「違う!」と思っていて、「真実を書かなくては!」と自分の記憶と格闘していたのですね。

そんなホームズの書いている「最後の事件」を見つけたのが、家政婦の息子の10歳の少年。
小さな可愛い読み手を見つけたホームズは、その少年の賢さも見出し、仲良くなっていきます。

ホームズ役のイアン・マッケランの老いというか、痴呆の演技も凄かった。。。
もちろん、若い人妻から誘惑される60歳のホームズも素敵でした。

現在(少年)、過去(最後の事件の謎)、日本の梅崎親子の話と三つの大きな流れがあり、それぞれに印象深い話でした。

何より、日本と日本人の描かれ方が、とても心に残り、とても印象深い映画になりました。

<予告編>

<原作本>

by カエレバ

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「マネーショート 華麗なる大逆転」は、音楽映画だった?!【追記あり】

マネーショート」(原題:The Big Short)観ました。
クリスチャン・ベイルが出ているから、です。

だが、ブラット・ピットが製作のひとりで、結構おいしいところは持って行った感はあるよね。
でも、初老のブラット・ピットも、案外カッコ良かった!
今までとは、全然違う雰囲気だったし、良かったんじゃないかな?
あれだったら、持っていかれても仕方がない。結構、地味だったけど。。。

で、クリスチャン・ベイルだけれども、結構大きく映画館で宣伝されていたんだけど、4人並んでいる中の誰なのか、よくわからなくなってしまった。
ブラピ以外は、「そんな感じのときあるよね」って感じで、目の悪いわたしには、ちょっと区別がつかなくて。。。汗
もう、いつも全然違うから、顔がわかんなくなっちゃったよ。。。笑
でも、一応、一番はじめに、「あ!」って思ったのがクリスチャン・ベイルだったよ。

役の方は、結構、わかりにくいけれども細かく役作りしてたよね。
義眼の元神経外科医、ここまではいいんだけど、、、ヘビィメタルを轟音で聴き、ドラムを激しく叩き、Tシャツに短パンのラフな格好で、裸足で歩く、、、という、ちょっと近寄りたくない感じの変人。。。
このへヴィメタルを轟音で聴いているのって、もしかしたら、耳もあんまり聞こえないじゃないかしら?と思ったり。。。それか、逆に鼓膜がすごく強いの。
映画では、「7時間こもってる」って言われてるように、すごく集中力があるっていう表現にもなってると思う。

▲「マネー・ショート 華麗なる大逆転」特別映像

あと、メタルとかって、曲によっては、頭が整理される曲っていうのがあるのよね。
実際のバーリが、そういう曲を聴いていたのかどうかまではわからないけれど、その可能性はあるよね。
徳永英明さんのしっとりした曲の後で流れたので、余計に印象的だったGuns’n’Rosesのこの曲などもそうなんじゃないだろうか?

Guns N’ Roses – Sweet Child O’ Mine
と思って聞き直してみたら、そんなでもなかったんだけど、(汗)
ギターリフとハイトーンボーカルが耳に残って、勝手にリフレインするので、その効果がないとも言えない。

ちなみに、徳永英明さんの曲は「最後の言い訳」で、ラスベガスの日本料理店での接待(?)中に流れていました。

徳永英明 / 最後の言い訳
「一番大事なものが、一番遠くへ行くよ」がメッセージでしょうか?

そう言えば、レッド・ツェッペリンとかも使われているし、ゴリラズの曲もかかってるらしいし、案外音楽に注目して観ても、おもしろい映画なんじゃないかと思います。


Led Zeppelin When The Levee Breaks by Zepparella
この曲は「堤防が決壊するとき」というメッセージ?!
こちらは、Zepparellaという女性バンドのカバーバージョンです。

わたしには、金融用語とか、わからないですが、それでも、ゴーストタウン化している街を見たりしたら、すごいバブル、、、しかも、もうはじけそうっていうのは、見れば、わかる。
ちょっとわかりにくかったのは、バーリは、どうしたかったんだろう?
ただ、儲けたかっただけ、とは思えないような?
それまでのいろいろなことに対して、「大逆転」をしたかっただけなのだろうか?
このまま放っておいたら、もっと酷いことになる、(リーマンショックよりもひどい状況に)そう思ったんじゃないだろうか?
そう思ってしまうのは、思い込みというか、そうであって欲しいという願いなんだろうか?
もうちょっと、そこら辺をわかりやすく描いて欲しかった。
FBIだったか、CIAだったかにも、さらに事情聴取されたらしいので、やっぱり知りたいところは、そこなんじゃないだろうか?

その点、ブラピの役のリカートは、若いふたりのトレーダーが儲かって喜んでいるのを叱りつけ、その裏で損をする人がいる、さらにその先には、のちに「リーマンショック」が起こることも見抜いてるような感じで、ちょっとカッコいいよね、あのシーン。
(だから、おいしいところを持って行かれた感じがしているんだけど)

観る前は、「ドキュメンタリータッチのむずかしい映画なのかしら?」と思っていたのに、意外にコメディタッチで、セリーナ・ゴメスやら、バスタブに浸かったセクシーなお姉さんやらが登場して、むずかしいことを、説明してくれるし、銀行員役のライアン・ゴスリングが一番胡散臭かったり、なんていうか、これが「アメリカン・ジョーク?」っていう感じ。
さらに、これがアカデミー賞の脚色賞を受賞して、「アメリカ人って、こういうのが好きなんだなぁ」と思いました。

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▲「脚色賞」は原作のある映画に与えられる賞。こちらが原作。


『マネー・ショート 華麗なる大逆転』予告編

【追記】書いた後、検索してみたら、やはり音楽に注目している人が数人いらっしゃり、歌詞なども、映画の内容・テーマに合わせて選ばれていることも指摘されていました。
やはり「ヘヴィメタ」とか、わかりやすく括ってしまうと、「大事なことに気付かないで過ぎてしまい、大切なものを失ってしまう」というのが、音楽に隠されたメッセージなのかな?
おもしろいことに、レッド・ツェッペリン、徳永英明、ゴリラズを取り上げている人が多くて、しかもこの3組はヘヴィメタルではありませんよね。
特に、徳永さんは、日本人にはわかりやすいヒントだったかも?
その他の挿入曲の歌詞なども分析して、解説してくれる人いないかなぁ?
この間の「語るべき映画」とかで取り上げてくれないかな?
誰だったら、語ってくれるかな?
そうだ、この映画は、実は、立川シネマツーで極音で観るべき映画だったんだ。。。