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「キャンディレラ」とは?『女たちの韓流ー韓国ドラマを読み解く』(by 山下英愛)を読了。

図書館でブラウジング中に偶然見つけた本です。
山下英愛さんの『女たちの韓流ー韓国ドラマを読み解く』を読了しました。
何故、この本を読んでみようと思ったかと言うと「キャンディ」+「シンデレラ」=「キャンディレラ」について書かれていたからです。

このブログでは『主君の太陽』の中で使われている「キャンディ」という言葉に注目して、よく取り上げていました。
検索されてくるワードとして、「キャンディ」がとても多く、皆さん、疑問に思われていることもわかっていました。
そのため、いつか韓国ドラマの「キャンディ」について、ちゃんと書きたいと思っていました。
※『主君の太陽』第一話に出てくるゴンシルの携帯の着信音がアニメ『キャンディ・キャンディ』の主題歌のイントロだったのですが、日本版では違う音になっていました。だから、日本版を見た人には余計わかりにくいんです。

この本では、「キャンディレラ」の例として『がんばれ!クムスン』(2005)が挙げられていました。
他にもいくつかのドラマのタイトルが挙げられていました。
逆境の中でひたむきに生きる女性主人公」が「条件のよい男性と結ばれるシンデレラ・ストーリー」を「キャンディレラ」と言うと書かれています。

残念なことに、著者は、わたしよりちょうど10歳くらい年上のようですが、『キャンディ・キャンディ』の存在も知らなかったそうです。
たしかに『キャンディ・キャンディ』が連載されていた「なかよし」は小学生向けの漫画雑誌ですし、当時の高校生は読まないかもしれません。
アニメの『キャンディ・キャンディ』は、日本とほぼ同じ時期(1977年)に放送され、韓国でも人気があったようです。
キャンディ」と言う言葉が韓流ドラマの中でも使われていることからも、どれくらい一般的であるかがわかります。
著者も、韓国の友人から「この漫画の主題歌を知らない韓国人はいない」と言われています。

そんな訳なので、韓国ドラマの「キャンディ」事情はわかったのですが、『キャンディ・キャンディ』と「キャンディレラ」という言葉の持つ「シンデレラ・ストーリー」的なイメージとのギャップについてまではわかりませんでした。

キャンディは、孤児院から裕福なラガン家(イライザとニールの家)にもらわれたけれど、イライザとニールにいじめられていたし(この辺りは、シンデレラが姉にいじめられていたのに似ている)、アードレー家の養女となっても初恋の人「丘の上の王子様」にそっくりなアンソニーも死んでしまうし、、、後に俳優となる恋人のテリーとも結ばれていない。(わたしの記憶ではテリーも死んでしまったと思っていたんだけど、違った?記憶をなくしたんだっけ?要確認!)
最終的に、アルバートさんが初恋の人「丘の上の王子様」だとわかったけど、別に結ばれたわけではない。

クムスンとの共通点があるとすれば、クムスンは美容師、キャンディは看護師として、手に職をつけているところは近いかもしれないです。
そういう意味では、ゴンシルが大学に復学しようとしたり、同じく幽霊が見える謎の人物と旅に出たりして、「キャンディ」と言われないようにしようとするのもわかるような気もします。
『コーヒープリンス1号店』のコ・ウンチャンがバリスタ修行のためパリに行って帰ってくるのも、このパターンですね。

さて、この本では、「キャンディレラ」だけでなく、戸主制度廃止女性大統領など、韓国の女性事情もわかり、実は観ていないドラマが多いのですが、とてもおもしろく読め、観てみたい韓流ドラマが増えてしまいました。
コンジュイ・パッチュイ伝」という韓国の「シンデレラ物語」のような昔話があるそうで、90年代以降のトレンディドラマには「コンジュイ・パッチュイ型」のものが多く、2000年代以降になると「女人発福型」と言われる「自らの力で人生を切り拓く女性主人公」が登場するようになるそうです。(「説話の海から汲み上げた韓国ドラマ」(byハン・ジソン,韓国学術情報,2005)日本語では読めないようです)
他にも説話をストーリーに取り込んでいるドラマがあるというのもおもしろかったです。
偽物が本物の振りをする「真仮争主説話(チンカチュンジュ)」は、ヒジュがハンナのと入れ替わっているところで『主君の太陽』にも取り入れられていると思いました。

韓流ドラマを、韓国の時事問題や、昔話・説話、そして日本のアニメ『キャンディ・キャンディ』等とも絡めて、より深く理解することができる本だと思います。

女たちの韓流――韓国ドラマを読み解く (岩波新書)

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by ヨメレバ